令和6年度第1回Cherishの会セミナー報告
令和6年度 第1回 Cherishの会セミナー報告
Cherish 山川 和子
2024年5月29日(土)14:30~16:00、「非造影で痛くないMRI乳がん検診」(ドゥイブス・サーチ)を考案された高原太郎先生をお招きして、愛知県技師会研修室よりWeb型式でご講演いただきました。MRIのバイブル的書籍「MRI自由自在」の著者、或いはDWIBS法の考案者として御存知の方も多いと思います。
医学部卒業後、小児科医としてスタートを切られたものの、臨床に導入され始めたMRIに強く惹かれて放射線科へ転向。当時は担当できるスタッフが少なかったこともあり、診断だけでなく、撮像もされていたそうで、パラメータ調整を含め、求める画像を得るための研究を重ねていかれたそうです。実際に御自身の手で装置を動かしたことでMRIの装置自体に精通され、後にDWIBS法の考案に繋がったとのことでした。現在流通している機種についても非常に熟知していらっしゃいます。
乳がんの検出に特化した検査を目的に、2018年に株式会社ドゥイブス・サーチを立ち上げられ、提携されている病院を通じて、延べ2万人以上の方が検査を受けてこられたそうです。検査自体は提携病院で行い、読影とレポートを届ける形で行っていらっしゃいます。検査装置と検査技術が条件を満たせば乳腺外科である必要は無く、導入されたことでMRI 検査の空き枠が解消し、経営改善と検診受診希望者の要望に応えられるようになった事例もあるそうです。ただし、条件を満たすまでの調整が出来ることが必要ですので、装置の機種が限られています。
非造影で放射線を使いませんので、受診者への身体的負担が少なく、何よりMRIはマンモグラフィと異なり乳房を圧迫しないため、痛みが理由で乳がん検診を避けてこられた方や、インプラント挿入をされている方でも検査が可能であることに強みをもっています。この方法が乳腺検査の選択肢として加わることで、乳がん検診受診率向上と死亡率減少へ繋がっていくことを期待していらっしゃいました。
また、検査への心理的ハードルを下げる工夫もされています。その一つは着衣のままで検査をすることにしたこと。乳房を自然下垂させた場合と形は異なってきますが、病変の有無の確認ができれば良いと割り切ることにし、受診者の羞恥心が和らぐように配慮されています。また、男性の技師でも検査を行いやすい状況であれば、施設側にもメリットがあります。受診者への検査結果レポートも判りやすい文章で、御本人の不安への回答も含めて届くよう工夫をされています。きめ細やかなレポート作成になるため、社内の診療放射線技師の方も作業の一端を担っておられ、技師の活躍の場が広がる形にもなっています。
自由診療となりますので費用が比較的高額になりますが、自治体の中には直接補助を行っているところや、ふるさと納税にも活用されているそうです。
休憩を挟まず約75分間、会場にいる役員を巻き込んで画像の読み方をレクチャーして下さるなど、没入感のある講演の進行に引き込まれ、通常は講演中の写真を残すところを誰もが忘れてしまうほど、熱のこもった、内容の多いご講演でした。本レポートでは内容の一部しかお伝えできませんが、会社のホームページやSNSなどでも詳しく発信していらっしゃいますので、振り返りも兼ねて活用いただければと思います。尚、補足情報となりますが、前述の「MRI自由自在」の改訂版を現在執筆中とのことで、来年あたりの出版を予定されているそうです。
今回、MRIの話題とあってか、普段のCherishセミナーと比較して男性の参加が目立ち、非会員の方も参加されるなど関心の高さを感じました。一方、セミナーの周知開始が開催の1ヶ月前からとなり、「参加したかったが既にスケジュールが埋まっており残念です」とのお声を複数頂戴し、機会を逃された方には大変申し訳なく思います。今後、作業スケジュール等を見直し早めにお知らせできるよう改善いたします。